今月のクレープストーリー
クレープにちょっと素敵なストーリーを添えて…
2025年9月のクレープストーリー
「二人だけの銀河旅行」
※この短編は空想スケッチです。
モデルは不在。すべて想像の産物でお届けしております。
クリスタルのイヤリングにイルミネーションが反射する。
ターミナル駅のコンコースにはこれから旅に向かう人や見送る人、旅から帰って来た人や出迎える人で賑やかだ。
コンコースの中央、ドーム型の天井に向かってそびえ立つ大きなクリスマスツリー。
今年はシャンパンゴールドのイルミネーションライトが飾り付けられている。
派手な色味のイルミネーションよりシンプルで好きだなぁと思う。
事実、ゴールドで統一されたツリーはシンプルゆえに品良くまとめられていてかえってゴージャスに見える。
しばらく見とれているとイルミネーションの向こうから彼が手を上げて歩いてくるのが見えた。
三カ月ぶりかしら。
明るい笑顔にこちらの顔もほころぶ。
「いつもありがとう」
彼の目を見てちゃんと伝える。
「何が?」
照れたようにはにかみながら彼がおどける。
二人とも嬉しくなって自然に抱き合う。
「駅にいるとなんだか列車に乗りたくならない?」
ふとした提案に
「いいよ!乗ろう!」
私の手を取り改札口を抜ける。
「どこへ行くの?」
「どこでも良いさ。明日から休みなんだし。」
列車は思いのほか空いていて二人の他に二組、家族連れと出張帰りと思われる人がいるだけでほぼプライベート空間と言っても良かった。
寛いだ雰囲気に自然に手をつないだ。
列車はゆっくりと街並みを抜け進む。
心地良い揺れを感じながら彼の肩に頭を預け微睡んでいるとふと列車が浮いたような気がした。
丁度飛行機が離陸したときのような浮遊感を感じる。
慌てて彼にしがみつく。
何が起こったのかとふたりで窓の外を覗いた。
窓の外は真っ暗で街明かりも何も見えない。
二人で顔を見合わせもう一度窓の外を見る。すると微かに視界の下の方が明るい。
恐る恐る下を見ると遥か下界に街明かりが連なっている。
列車が空を飛んでいる。
状況が理解できず彼の顔を見る。
彼も同じらしく二人で顔を見合わせたまましばらく時間が過ぎた。
でもつないだ手のおかげか不思議と怖さは感じない。
すると窓の外がフワッと明るくなった。
壮大なプラチナ色の輝きに目を奪われ驚いていると目の前にオリオン座が広がった。
夜空に輝く四角形が今、目の前にある不思議。
星の間をほうき星の速さでサーフィンする。
列車が通過したあとにはたくさんの星屑がキラキラと尾を引き、いつしか天の川に合流した。
天の川の銀色に照らされて、銀河は漆黒ではなく藍色をしていることに気が付く。
列車は流れに乗って更に加速度を上げた。
To be continue…
*毎週水曜更新