12月のクレープストーリー (毎水曜更新)
12月のクレープストーリー
瞳にダイアモンド
今年のツリーはスノーブルー。
昨年のシャンパンゴールドの方が綺麗だったな。
ツリーを眺めながら私は思う。
私の勤めるジュエリーショップの正面に毎年設置される大きなクリスマスツリー。
高さ5mほどの大きなツリー。
まだクリスマスが華やかな頃は、点灯式などテレビなどでも取り上げられるほど豪華なものだった。
ーー寒空にスノーブルーは余計に寒く感じちゃうわ。
そんなことを思いながらガランとした店内からツリーをボーッと見上げていた。
かつては恋人たちの一大イベントだったらしいクリスマスも、若者の意識の変化と多様性が重んじられる時代になりその存在感も徐々に薄くなりつつあった。
そしてプレゼントの定番だったジュエリーもプレゼントの候補としては人気が落ち、今ではクリスマスも普段の日と変わらない売れ行きとなっていた。
ーー私はジュエリーをもらえたらすごく嬉しいけどな。
私は夢みがちなところがある。
私にとってジュエリーは恋や愛情、その先にある結婚を象徴するものだった。
だからジュエリーは価値のあるものだったし、職場にジュエリーショップを選んだのも必然の成り行きだった。
それにしても今夜は、やけにお客が少ない。
クリスマスが下火になったと言っても12月に入るとそれなりに売り場も活気あるのが通例である。
今は売り場にはお客が一人もいない状態が一時間も続いている。
暇を持て余し相変わらずぼんやりツリーを眺めている。
エントランスのドアが開くのが見えた。
慌てて姿勢を正し、お客を迎える。
「いらっしゃいませ」
お辞儀をして顔を上げる。
「!!」
びっくりして二度見した。
爽やかすぎる笑顔で目の前に現れた男性。
元彼だった…。
To be continue…
